メモ

気になるデータ

一つ目。ポール・ヘインの「経済学入門」より 所得格差について述べた部分の脚注に、所得の多い層は少ない層より労働時間が長い旨の記述あり。所得格差に注目が集まってもこのような事実は黙殺されてしまう。所得の少ない層は、労働意欲があってもあまり長く…

「大気を変える錬金術」を読む

参考文献 大気を変える錬金術 ハーバー、ボッシュと化学の世紀 トーマス・ヘイガー 著高校の化学でハーバー・ボッシュ法を習ったことがある人もいるだろう。空中窒素からアンモニアを合成する方法であるが、安価で大量生産に向き、廃熱が有効利用できること…

なぜ低所得者層の肥満率は高いのか

ベッカー教授、ポズナー判事の常識破りの経済学を読んで人間行動の撹乱について考えてみた。「ベッカー教授、ポズナー判事の常識破りの経済学」によれば、低所得者層の肥満率は高いらしい。これは古典的な経済学による分析より人間行動から考える方がわかり…

クチコミ市場

リスク評価に市場をというのが上のエントリの結論の一つだが、もう一つ今回の地震で市場の力をもっと導入すべき分野に気付いた。NPOなどの評価を行う市場である。 何か寄付をしたいと思った場合、どこに寄付すれば自分の納得のできるものになるかわからない…

市場の予測力

市場とは、参加者の判断の集積であり、たいていの場合個人の予測よりも当たることが多い。また、市場にはみんなが気付いていない重要な情報を伝達する力もある。今回の地震でその力は生かされたのか。 今回の地震で、津波で被害を受けた人や原発周辺に住んで…

「選択の科学」を読む

参考文献 選択の科学 シーナ・アイエンガー著選択という問題を様々な角度から扱った本だ。著者の主張通り「選択」は人生を形作るものだろう。従って確かに「選択」について考えることは有益だろうと思う。本書は行動経済学をベースに多岐にわたる視点から選…

「〈反〉知的独占」を読む

〈反〉知的独占 ―特許と著作権の経済学 ミケーレ・ボルドリン、デイヴィッド・K・レヴァイン 著蔵さんからの紹介(こことここ)で読んでみた。特許や著作権と言った「知的財産権」についてはあまり考えたことがなかったが、本書で改めて考えるきっかけにな…

「茶の世界史」を読む

参考文献 茶の世界史 角山 栄 著気になったところ ヨーロッパに最初にもたらされた茶は中国からではなく日本からで、東洋の神秘・東洋の進んだ文化として捉えられたが、豊かになるにつれて茶は商品化していく。中国やインドの茶に日本茶は負けてしまう。ヨー…

フリーランスの牧師

参考文献 10万年の世界経済史 上 p143産業革命以前のイギリスには、フリーランスの牧師がいて結婚の承認を行い、その手数料で牧師は生計をたてていた。まず、結婚を国家が承認していないところがいい。教会の権威を利用しているが単一の機関ではなく、競合す…

教会の貸し付け

参考文献 10万年の世界経済史 下 p41中世の教会は利子をとることを禁じていたが、自分たちは様々な言い訳を用意して貸し付けを行い、利子をとっていた。あるいは差別されていたユダヤ人に金貸しをさせた。

効率的なダイエット

Exciteに運動より食事制限の方がダイエットに有効と載っていた。考えてみれば当たり前のことで、ケーキを食べるのはごく短時間だが、そのカロリーを消費するにはかなり運動をしなければならない。ケーキが300-400kCalとすると、だいたい1時間のジョギングで…

なぜ天然痘は根絶できたか

たまには違った方面の話題も痘瘡*1はどうして根絶できたのか。痘瘡自体非常に恐ろしい病気であるが、根絶しやすい条件が整っていた。 1.良く効くワクチンが作りやすかった 牛痘から安全性の高いワクチンを比較的手軽に作ることができた。病原菌によってはワ…

著作権・特許

「10万年世界経済史 下」で産業革命と著作権・特許に関するくだりがある。蒸気機関や紡績機の改良に取り組んだ人はそれによってあまり利益を得ていないというものだ。むしろ貧しい人に利益がもたらされたと。「知的独占*1」も大筋ではそのようなことに触れて…

日本人リバタリアン説

いつもコメントを頂いているwasting time?さんが「日本人が忘れつつあるもの」というタイトルでエントリをアップされている。「人様に迷惑をかけない」というのはリバタリアンとしての基本的な感覚によくあうと思う。 困ったと言えば、なんでもしてもらえる…

中世とアナルコキャピタリズム

只今、「数量化革命」という本を読んでいるが、第2章に中世での権力の抑制の話が出てくる。中世の西欧では教会、貴族・王などが部分的な権力を持っていても、それぞれの権力は完全ではなかった。例えばプロテスタントを信仰する者がカソリックから逃げて来て…

マイノリティの成功

政治的マイノリティで成功している集団は何が違うのだろう。以前に遺伝のことでユダヤ人を取り上げたが、今日は別の角度から考えてみたい。 金融・交易に携わるユダヤ人、客家(華僑)、印僑はビジネスで成功しているイメージがある。 これの一部は信頼と安…

労働価値説の問題点

労働価値説で私的所有権を擁護できたとしよう。労働価値説の問題点はどこに出てくるのか。人間は交換を生み出した。リドレーは「繁栄」で人間の動物の違いを交換に求めているが、私も非常に重要な発見だと思う。相手は持っているが自分が持っていない物と、…

私的所有権の正当化

私的所有権を正当化するまとまった議論を始めたのはジョン・ロックである。労働価値説に基づく「無主物に労働を混ぜたら自分の物になる」という考え方。 労働価値説だけでは問題が出てくるが、労働には価値があり働いた成果は自分の物であるということは私に…

リストラの本当の意味

リストラされると大変なことは理解している。だが本当に大変なのは次の仕事が見つからないからで、この原因の一つが解雇規制や最低賃金制度だということは何度か書いて来た。 以前にも書いたが、リストラの良い面をあげてみよう。リストラを断行する企業は落…

ピカソの絵画はなぜ高いか。ここから格差を考える

参考文献 トマス・ソーウェル著 「入門経済学」より労働価値説という考え方がある。物の値段は基本的にその生産に投下された労働量によって決定されるという考え方だ*1。私的所有権の根拠の一つとして、ロックが唱えた「ある物に自分の労働を混ぜるとそれは…

金持ちと貧困と

分かりやすさを狙ってか、勝ち組と負け組、二極化などという言葉がよく使われる。しかし、所得に関して言うなら現時点だけを捉え、しかも両極だけを比較するのは間違いのもとである。 所得でいくつかの階層に区切ってみても時間の流れとともに属する人間が入…

失業

参考文献 トマス・ソーウェル著 「入門経済学」第9、10、11章より欧州とアメリカで失業率がなぜ違うかに付いて、ソーウェルは雇用の際のコストだとしている。最低賃金制度と解雇規制のため労働力のコストが上がり結果的に失業者が増えてしまう。労働のコスト…

労働と資本の相対的希少性

参考文献 トマス・ソーウェル著 「入門経済学」第9章より少し前にリドレーの「勤勉革命」に付いて取り上げた内容をソーウェルも取り上げている。豊かな国では、労働力が相対的に希少であり、貧しい国では資本財の方が相対的に希少であるとしている。豊かな国…

強欲は差別をなくす

参考文献 トマス・ソーウェル著 「入門経済学」第9章よりトマス・ソーウェルは、入門経済学で差別と雇用の関係に付いて述べている。印象的なのは、1972年までさかのぼっても同じ境遇なら男性より女性の方がわずかに収入が多かった下りであろう。強欲な経営者…

犯罪の生物学

参考文献 D.C.ロウ 「犯罪の生物学 遺伝・進化・環境・倫理」より犯罪を犯すことに遺伝的な傾向はあるのだろうか。政治的な問題になりやすいこのテーマに付いて、現在わかっていることをわかりやすくまとめたのが本書である。本書の用意した答えは条件付きな…

答と行動と

経済学の入門書を読むと、人はアンケートに答えたことと同じ行動をとるとは限らないということが書いてある。建前と本音と言い切ると問題がありそうだが、重なる部分は大きいと思う。レヴィット*1はこのギャップをうまく本にしたとも言える。例えば、「超ヤ…

世の中そんなに甘くない

参考文献 トマス・ソーウェル著 「入門経済学」第6章よりほとんどの人は、大企業は一般の人から搾取することで成長していると信じているのかもしれない。しかしこれは大きな間違いだ。ソーウェルによれば、成長した企業はそれぞれの分野で価格を下げ一般の人…

価格統制は害をもたらす

トマス・ソーウェルの「入門経済学」で価格統制が失敗する様子がわかりやすく解説されている。歴史にも詳しいソーウェルは、大地震の後のロサンゼルスで住宅の数が激減したにもかかわらず価格が上昇するおかげで住宅が不足しなかったこと、ガソリンの価格統…

職人の経験って

製造業の分野で、職人の経験や暗黙知のようなものがあることは否定しない。ただ、本当にその仕事を大事に思うなら、データ化して後輩が習得しやすくするような努力も必要だろうし、そのことでその仕事が生み出すものをもっと多くの人に届けることができるだ…

ポリオ

以前、蔵さんがポリオワクチンのことでエントリをアップされていた。少し情報を追加しつつ私の考えをまとめてみよう。