「大気を変える錬金術」を読む

参考文献 大気を変える錬金術 ハーバー、ボッシュと化学の世紀
トーマス・ヘイガー  著

高校の化学でハーバー・ボッシュ法を習ったことがある人もいるだろう。空中窒素からアンモニアを合成する方法であるが、安価で大量生産に向き、廃熱が有効利用できることなどが特徴だ。本書はこのハーバー・ボッシュ法が人類に与えたインパクトを様々な方面から検討している。
まず、人口増加に食料供給が追いついていなかった社会からスタートし、グアノ(肥料になる鶏の糞)や硝石が食料問題を解決した様子を描く。あわせてこれらがチリやペルーに与えた影響、労働問題などが取り上げられる。続いて、空気からパンを作る方法つまりハーバー・ボッシュ法の実用化が描かれる。アンモニアは肥料の原料となるだけでなく、爆薬の原料にもなる。ハーバー・ボッシュ法が実用化され、それとあわせドイツが戦争に突き進んでいった様子やユダヤ人の問題が取り上げられる。最後には、空中窒素の固定と環境問題が論じられる。

コメント
ハーバー・ボッシュ法の威力がわかる良書である。人類が食料危機に陥らず繁栄しているのはひとえにハーバー・ボッシュ法のおかげだ。資源がある国が豊かだとは限らない。資源のないドイツが科学技術で大国になろうとした姿は日本のこれからを考える上で参考にしなければならない。同じように、ユダヤ人を排斥し、戦争に突き進んだ点も反面教師としてよく学ぶ必要があるだろう。