『階級「断絶」社会アメリカ』を読む、その2

第II部 新下層階級の形成
労働者階級の中に新しい集団が形成されてきている。今までは人種による経済格差が強調されていたが、白人に限定しても新しい下層階級が形成されてきている。この集団はアメリカの伝統的規範からははずれてきている。

日本では人種による経済格差はあまり問題になっていない。だからこそ、文化すら違う集団に別れつつあるという視点は日本の現状を考える上でも有効なのではないかと思われる。

第6章 建国の美徳
かつてのアメリカ人は上品ではなかったが、美徳があった。著者はその特質として「勤勉、正直、結婚、信仰」をあげる。また、全国民が同じ道徳観を共有していた。建国の美徳がアメリカが成功の理由の一つである。

信仰という部分は日本ではちょっとピンとこない。勤勉・正直等という部分はプロテスタントの倫理を彷彿とさせるが、そのような信念体系を選ぶ人間が成功しやすいということなのではないかと考える。

第7章 ベルモントとフィッシュタウン
著者は架空の新上流階級の街ベルモントと同じく架空の新下層階級の街フィッシュタウンを設定する。

典型的な街を設定することで後半の著者の論点がわかりやすくなった。

第8章 結婚
ベルモントとフィッシュタウンで結婚の様々な状態を比較する。フィッシュタウンでは未婚や離婚、片親の割合が高い。

これは日本でも同じようなことが言えるだろう。

第9章 勤勉
ベルモントとフィッシュタウンでどの位働いているかについて比較する。フィッシュタウンでは労働時間が短く、説明のつかない障害給付を受ける割合が高く、働いていない人の割合も高い。

これはそのままストレートに所得に結びつくだろう。

第10章 正直
まず、ベルモントとフィッシュタウンで犯罪について比較する。フィッシュタウンの方が圧倒的に犯罪が多い。ただし、破産という観点から見ると、両者とも誠実さが少なくなっている可能性がある。

学歴が高い方が人間性が悪いという誤った認識を抱く人がいるが間違いである。学歴やIQでみても高学歴の方が圧倒的に犯罪を犯す可能性が低い。

第11章 信仰
ベルモントとフィッシュタウンでともに信仰離れが進みつつあるとする。ただし、フィッシュタウンの方がより進んでいる。

ドーキンスも指摘しているが、アメリカでは無神論者と称するのははばかられるのかもしれない。定義からベルモントは知的に洗練された人たちであるから、信仰とは道徳の体系程度に捉えているのだろうとも思ったが、日本とアメリカでは全く違うのかもしれない。

第12章 現実のフィッシュタウン
今までにデータで示してきたフィッシュタウンの具体的な様子を描く。フィッシュタウンが都市から郊外へ移転しつつあることも述べられる。

日本でも生活保護の問題と絡んで描かれる様子とそっくりである。今の日本は豊かであり、なんとか再分配も成立している。そのため、働かないとすぐに飢え死にするということにはなかなかならない。

第13章 新下層階級の規模
新下層階級に分類される人の割合は増えている。

現代は豊かである。新下層階級がそのまま飢え死ににつながるわけではない。知的な能力が労働市場で高く評価されるからこそ格差が開いているのだと考える。