2011-01-01から1年間の記事一覧

リバタリアニズムと平等、公平感

前回のエントリをもう少し掘り下げてみることにした。 リバタリアニズムに平等がないというのは全くの誤解だ。まず次の内容はすべてのリバタリアンが同意すると思う。それは、私的所有権は皮膚の色や国籍に関係なく誰もが平等に持っている、ということだ。こ…

差別とリバタリアニズム

蔵さんの「海賊の経済学」に関する二つのエントリー(こちらとこちら)のうち、後者に関して。リバタリアニズムで誤解されがちなことの一つに「差別の肯定」がある。リバタリアニズムは、個人は何を考えようが自由だから当然差別も肯定する。しかしこれはリ…

検診に関するちょっとした考察

蔵さんに「リスク・リテラシーが身に付く統計的思考法」を紹介したのだが、意外に興味を持って読んでもらえたようだ。私自身、以前から、検診のどの部分が実際に役に立っているのか知りたい、と思っていた。全部ひっくるめて役に立つ・立たないではなく、何…

未熟な人間

未熟な人間が判断したことの責任を問うことはできるのかという問いがある。方向を変えて成熟した人間の判断とはどんなものだろうと思う。例えば知識をとって考えてみよう。ハイエクの言うように知識は局在している。つまり何か判断を下すにあたって完全な知…

地産地消の不思議

海のない地区は海産物は食べられないのか?特定の地区の農産物を食べ続けることこそ重金属等の汚染に弱いはずだが*1。 *1:色々な地区のものを食べることでリスクが分散できる

市場こそ電力不足を解消する

市場で電力不足解消というと短絡的に料金引き上げと言われることが多いが、もっと広い意味でとってほしい。東電以外の企業が自由に電力を供給・配電できるようになれば料金も下がるし、停電にも強くなるはずだ。今論争になっている「原子力は必須か」と「原…

ハイエクの予言

真の集産主義者たちにとって、権力はそれ自体、目的なのだ 隷属への道 第十章 p187より 今の日本の首相はまさにそれだな。

マッチポンプ

解雇規制、最低賃金で職に就けない人を増やしておいて「政治で解決」しようとする。 電力の安定供給のためと称して独占を許し、かえって電力の不安定供給になった後「政治で解決」しようとする。 典型的なマッチポンプ。 節電を呼びかけて高齢者が熱中症で亡…

サンクコスト

wasting time?さんがサンクコストについて書かれている。私も滞在時間を延ばすことで売り上げを増やしているビジネスモデルに付いて書いたところなので、進化論的にサンクコストに付いて更に考えてみよう。 確かに、どの人もサンクコストによって完全に撹乱…

開放性

心理学的な特質が人間の行動にどのように現れるか考えていて、開放性のことをまとめてみる気になった。 食べ物の好き嫌いが激しい人、中でも試してみようともせず拒絶する人を見ていると、開放性が少ないと人生の選択肢が狭くなるんだと思った。食べ物はあく…

本当に道徳なのか

以前、「金にこだわるのはおかしい」という内容のコメントを某所で頂いたことがあり、ずっと気になっていた。「リスクに背を向ける日本人」を読んで頭が整理できたのでまとめてみる。本書では、倫理観を二種に分けている。統治の倫理と市場の倫理だ。これは…

直感毒物学とその限界

代替医療がなぜ支持されるかに付いては色々な見方があるだろうが、ここでは「人工のものは危険で、自然のものが安全だ」という間違っているけれど支持されやすい思考回路に付いて考えてみよう。これは直感毒物学とでも言うべき考え方である。我々が口にする…

なぜ低所得者層の肥満率は高いのか

ベッカー教授、ポズナー判事の常識破りの経済学を読んで人間行動の撹乱について考えてみた。「ベッカー教授、ポズナー判事の常識破りの経済学」によれば、低所得者層の肥満率は高いらしい。これは古典的な経済学による分析より人間行動から考える方がわかり…

移民について色々考えてみた

知人の集まりで移民が話題に出たことがあり、色々と考えてみた。ある人は、「文化を守るため、福祉へのただ乗りを制限するために移民を制限すべきだ」という。発言者は、移民を受ける側を中心に考えていることに注意。また、これは二つに分けて考えるべき発…

クチコミ市場

リスク評価に市場をというのが上のエントリの結論の一つだが、もう一つ今回の地震で市場の力をもっと導入すべき分野に気付いた。NPOなどの評価を行う市場である。 何か寄付をしたいと思った場合、どこに寄付すれば自分の納得のできるものになるかわからない…

市場の予測力

市場とは、参加者の判断の集積であり、たいていの場合個人の予測よりも当たることが多い。また、市場にはみんなが気付いていない重要な情報を伝達する力もある。今回の地震でその力は生かされたのか。 今回の地震で、津波で被害を受けた人や原発周辺に住んで…

「選択の科学」を読む

参考文献 選択の科学 シーナ・アイエンガー著選択という問題を様々な角度から扱った本だ。著者の主張通り「選択」は人生を形作るものだろう。従って確かに「選択」について考えることは有益だろうと思う。本書は行動経済学をベースに多岐にわたる視点から選…

中東の革命と共通善

中東の革命の報道を見ていて少し考えた。私自身のイスラム教への理解は不十分だと思うので、以下の話はイスラム教がきっかけになったと思ってほしい。イスラム教の特徴は、ライフスタイルから法律まで宗教によって決められていることである。もっとも、国に…

豊かな社会と学歴と

最近の蔵さんのエントリで、学歴と家庭環境に関するものが二つあった(こことここ)。要するに社会が貧しいと家庭環境の差が大きく出るが、ある程度*1社会が豊かになると子供自身の能力の差が大きく現れるということだろう。 この事実をどう捉えるか。社会が…

マシュマロテストから進んでみる

少し前にマシュマロテストを取り上げたが、進化論的な観点からもう少し考えてみよう。マシュマロテストで問題にされる「目の前の利益を犠牲にして先のことを考える傾向」は、おそらく遺伝的に規定される*1だろう。この資質は動物と人間を区別する大事なポイ…

「〈反〉知的独占」を読む

〈反〉知的独占 ―特許と著作権の経済学 ミケーレ・ボルドリン、デイヴィッド・K・レヴァイン 著蔵さんからの紹介(こことここ)で読んでみた。特許や著作権と言った「知的財産権」についてはあまり考えたことがなかったが、本書で改めて考えるきっかけにな…

改めて自由貿易

穀物価格が上がっている。それでも小麦の国内価格は、海外の小麦の市場価格よりはるかに高い。関税をなくせば小麦の価格は逆に下がるのだ、少なくとも日本国内では。農家の保護とよくいわれるが、以前書いたように国内の小麦が高品質であるかどうかは疑わし…

努力

努力が報われてほしいというのはまあ感情として充分理解できる。リバタリアンとて「あなたがやっていることは誰も認めませんよ」と言われて喜ぶ人は誰もいないだろう。だが、努力が完全に報われる社会など存在しない。そもそも努力が報われるということを定…

個人主義に至る過程としての地方分権

KightLibertyさんのブログに掲載された越後和典の地方分権論。もっともと思う。政府を認めるかという議論はここでは保留にして考えてみる*1。少なくとも税は我々が払ったものであるから、払った人間のためになるように使われるべきだ。ぶれが少なくなるため…

手作りと清潔と

食中毒が報道されると、関係者の衛生に対する意識が問題にされる。しかし、おばあちゃんの手作りという枕詞が付くと、多少汚くても無視される。

「茶の世界史」を読む

参考文献 茶の世界史 角山 栄 著気になったところ ヨーロッパに最初にもたらされた茶は中国からではなく日本からで、東洋の神秘・東洋の進んだ文化として捉えられたが、豊かになるにつれて茶は商品化していく。中国やインドの茶に日本茶は負けてしまう。ヨー…

歌舞伎と相撲

歌舞伎や相撲で、泥酔して喧嘩だの八百長、賭博、薬物汚染だのが問題になっているが、問題にすべきポイントが違う。まず、歌舞伎がらみで。喧嘩は一方的被害者がいるなら問題だろうが、双方やり合ったなら格闘技と同じだろう。まあ、先に手を出した方が悪い…

道徳を持ち込むのはやめにしよう

リバタリアニズムというより個人的な考えと前置き。物事に道徳を持ち込むのが嫌いだ。繰り返しになるが、仕事に「心を磨く」ことなど持ち込む必要はないだろう。契約通りの仕事をして相手に満足してもらえばそれでいい。 同様にドラッグをやる人間を非難する…

ドラッグ全面解禁論

ドラッグ全面解禁論 デイヴィッド ボアズ 著すでにslumlordさん、typeAさんからも紹介されているが、私からも簡単に紹介しておきたい。 出版社のドラッグをやろうよという感じのラインナップの中では異色で、ドラッグ禁止がどのような害をもたらしているかを…

マシュマロテスト

知人が4歳の子供を連れて出かけ、ある子供用の乗り物の順番を待っていたところ、別の同年代と思われる子供に割り込まれた。「そのとき自分の子供は黙ったままで引っ込み思案だ」と心配していた。別の角度から光を当てれば知人も喜ぶかと思い、マシュマロテス…