「〈反〉知的独占」を読む


〈反〉知的独占 ―特許と著作権の経済学 ミケーレ・ボルドリン、デイヴィッド・K・レヴァイン

蔵さんからの紹介(ここここ)で読んでみた。特許や著作権と言った「知的財産権」についてはあまり考えたことがなかったが、本書で改めて考えるきっかけになった。なお、著者らは知的財産権ではなく、知的独占という言葉をあえて使っている。その理由に興味のある人はぜひ本書を。


著者らの結論は明快である。特許や著作権イノベーションにはあまり寄与しておらず、廃止した方が良いというものだ。その論拠に付いては最も論争になりそうな医薬品特許で重点的に説明しており、説得力はある。著作権に付いても、廃止してよいとする。著作権を廃止したら作家などはどうなるんだろうと思っていたら、なるほどという議論が展開されていた。まず、ベストセラーは売れたからベストセラーなのであり、そのとき市場はかなり飽和しており、後発が複製して参入してもあまり利益はないというものだ。保護貿易と知的独占の比較など面白い視点が盛り込まれており、蔵さん同様お勧めの一冊である。