2011-01-01から1ヶ月間の記事一覧

ドラッグラグ

日本で問題になっている「ドラッグラグ」とは、海外で承認・使用されている薬が日本国内で使用できない*1ことをいう。私見だが、使用できないことだけが問題なのではなく、使用後に出た副反応に対する世論も問題なのだと考える。以下では、ドラッグラグ問題…

脳は美をいかに感じるか

脳は美をいかに感じるか―ピカソやモネが見た世界 セミール ゼキ 著進化論・認知機能つながりで。 視覚という分野でも、心理学的・生理学的な知見が集まりつつある。著者は、美術とは曖昧さだと考え、美しさを構成する各要素をできるだけ純粋な形で取り出した…

進化論と教育、そして自由

無神論を扱うと進化論の話になるので少し書いてみよう。ドーキンス、デネット更にニコラス・ハンフリー、スティーブン・ピンカーといった、進化論に立脚して各分野の仕事をしている人たちが問題視するのは、教育における進化論の扱いだ。これは児童虐待と似…

無神論の本の続き

自分で参考として取り上げた本を簡単に。 神は妄想である リチャード・ドーキンス 徹底的な宗教批判。創造論に進化論をぶつけるスタイル。宗教が引き起こす問題に付いて、宗教が絡むと口に出しにくい雰囲気があることを批判する。日本とアメリカで無神論の扱…

中世とアナルコキャピタリズム

只今、「数量化革命」という本を読んでいるが、第2章に中世での権力の抑制の話が出てくる。中世の西欧では教会、貴族・王などが部分的な権力を持っていても、それぞれの権力は完全ではなかった。例えばプロテスタントを信仰する者がカソリックから逃げて来て…

無神論

たまたま蔵さんと人間行動の生物学的基盤に付いて議論していることもあって「神はなぜいるのか」を取り上げたつもりだった。意外に好意的なコメントをリバタリアニズムつながりの人たちから頂いたのでもう少し書いてみよう。無神論とリバタリアニズムに付い…

神はなぜいるのか?

パスカル・ボイヤー著 「神はなぜいるのか?」よりタイトルからは神という概念に対して肯定的な感じがするが、内容は進化論に基づいた人間の認知機能から「なぜ超自然的な存在がいるように考えるか」を解き明かす本だ。無神論というと、ドーキンスやデネット…

マイノリティの成功

政治的マイノリティで成功している集団は何が違うのだろう。以前に遺伝のことでユダヤ人を取り上げたが、今日は別の角度から考えてみたい。 金融・交易に携わるユダヤ人、客家(華僑)、印僑はビジネスで成功しているイメージがある。 これの一部は信頼と安…

科学に対する猜疑心

迷信やオカルトにはまり込む人には共通して科学に対する猜疑心があるように思う。同時に他のオカルトなり迷信には親和性が高い。また、何にでも人為的な意志の働きを想定する傾向があるようだ。

スラムの物価は高いか

スディール・ヴェンカテッシュの「ヤバい社会学」や「アメリカの地下経済」を読むと、スラム街の物の値段が概して高い記載がある。強盗などのリスクプレミアムと説明されていたと思う。しかし、日本のスラム街はたいていの物は安いように思う。質だけでは説…

労働価値説の問題点

労働価値説で私的所有権を擁護できたとしよう。労働価値説の問題点はどこに出てくるのか。人間は交換を生み出した。リドレーは「繁栄」で人間の動物の違いを交換に求めているが、私も非常に重要な発見だと思う。相手は持っているが自分が持っていない物と、…

私的所有権の正当化

私的所有権を正当化するまとまった議論を始めたのはジョン・ロックである。労働価値説に基づく「無主物に労働を混ぜたら自分の物になる」という考え方。 労働価値説だけでは問題が出てくるが、労働には価値があり働いた成果は自分の物であるということは私に…

価格をつり上げることのできる企業などない

大企業というとそれだけで「強欲」で「価格をつり上げている」というイメージが持たれているようだ。自由な市場では大企業が価格をつり上げることなどできない。それより低い価格で商品なりサービスなりを提供する企業が現れて、大企業の地位を脅かすように…

エコポイントの影で

タイトルではエコポイントとしたが、エコカー減税なども含めて。 エコポイント・エコカー減税の目的は何だろう。環境問題対策*1より景気対策という意識の人が多いはずだ。一応景気対策として考えてみる。 エコポイントが付くからといってもう少し先まで使う…

モジュールは同じでも

人間の意識や思考、どのように外界を認識しているかに付いては色々わかって来ているようだ。 ピンカーやデネットの一連の著作やパスカル ボイヤーの「神はなぜいるのか」では、人間の思考を支えるモジュールとして「直感物理学」や「志向性」に触れている。…

演繹と帰納、ベイズ

蔵さんがアップされたEBMの話を読んで色々考えた。ある程度自然科学になじんだ人間は蔵さんが書かれる通り、ホメオパシーを試しもしないで退けるだろう。科学者としてはフェアな態度ではないかもしれないが、物理や化学の知識から実験するまでもなく間違いだ…

リストラの本当の意味

リストラされると大変なことは理解している。だが本当に大変なのは次の仕事が見つからないからで、この原因の一つが解雇規制や最低賃金制度だということは何度か書いて来た。 以前にも書いたが、リストラの良い面をあげてみよう。リストラを断行する企業は落…

ピカソの絵画はなぜ高いか。ここから格差を考える

参考文献 トマス・ソーウェル著 「入門経済学」より労働価値説という考え方がある。物の値段は基本的にその生産に投下された労働量によって決定されるという考え方だ*1。私的所有権の根拠の一つとして、ロックが唱えた「ある物に自分の労働を混ぜるとそれは…

金持ちと貧困と

分かりやすさを狙ってか、勝ち組と負け組、二極化などという言葉がよく使われる。しかし、所得に関して言うなら現時点だけを捉え、しかも両極だけを比較するのは間違いのもとである。 所得でいくつかの階層に区切ってみても時間の流れとともに属する人間が入…

石油はなくなるのか

現在利用可能な原油埋蔵量は価格や採掘コストに左右される。原油価格が上昇すればコストに見合わないとして放置されていた油田からの採掘が始まる。また、長期的には別の資源が利用可能になる*1。 *1:石炭はなくなると言われていたが、原油の方が利用価値が…

失業

参考文献 トマス・ソーウェル著 「入門経済学」第9、10、11章より欧州とアメリカで失業率がなぜ違うかに付いて、ソーウェルは雇用の際のコストだとしている。最低賃金制度と解雇規制のため労働力のコストが上がり結果的に失業者が増えてしまう。労働のコスト…

労働と資本の相対的希少性

参考文献 トマス・ソーウェル著 「入門経済学」第9章より少し前にリドレーの「勤勉革命」に付いて取り上げた内容をソーウェルも取り上げている。豊かな国では、労働力が相対的に希少であり、貧しい国では資本財の方が相対的に希少であるとしている。豊かな国…

強欲は差別をなくす

参考文献 トマス・ソーウェル著 「入門経済学」第9章よりトマス・ソーウェルは、入門経済学で差別と雇用の関係に付いて述べている。印象的なのは、1972年までさかのぼっても同じ境遇なら男性より女性の方がわずかに収入が多かった下りであろう。強欲な経営者…

犯罪の生物学

参考文献 D.C.ロウ 「犯罪の生物学 遺伝・進化・環境・倫理」より犯罪を犯すことに遺伝的な傾向はあるのだろうか。政治的な問題になりやすいこのテーマに付いて、現在わかっていることをわかりやすくまとめたのが本書である。本書の用意した答えは条件付きな…

答と行動と

経済学の入門書を読むと、人はアンケートに答えたことと同じ行動をとるとは限らないということが書いてある。建前と本音と言い切ると問題がありそうだが、重なる部分は大きいと思う。レヴィット*1はこのギャップをうまく本にしたとも言える。例えば、「超ヤ…

世の中そんなに甘くない

参考文献 トマス・ソーウェル著 「入門経済学」第6章よりほとんどの人は、大企業は一般の人から搾取することで成長していると信じているのかもしれない。しかしこれは大きな間違いだ。ソーウェルによれば、成長した企業はそれぞれの分野で価格を下げ一般の人…

企業の撤退は悪か

企業が工場を閉鎖するというと犯罪であるかのように言われる。しかし、赤字操業が続けばその企業全体が倒産に追い込まれるだろうし、経営陣は株主から訴訟を起こされるかもしれない。そもそも株の価値がなくなったらその損害は誰に文句を言えばいいのだろう…

福祉制度が機能しないわけ

公的な福祉と民間の競争する福祉団体の違いは何だろう。公的な福祉は独占団体ということだ。競争がないから効率が悪い。逆に福祉を民間主体で行うようになれば、団体同士が競争し、互いの目の届かないところをカバーし合う可能性が生まれる。そもそも、国が…

株仲間の話

wasting time?さんの株仲間の話を読んでもっともだと思った次第。付け加えるとすれば、問題となる独占は政府の規制によるものだというロスバードの議論をあげておきたい。追伸 トラックバックをしてみたがうまくいったかな?

価格統制は害をもたらす

トマス・ソーウェルの「入門経済学」で価格統制が失敗する様子がわかりやすく解説されている。歴史にも詳しいソーウェルは、大地震の後のロサンゼルスで住宅の数が激減したにもかかわらず価格が上昇するおかげで住宅が不足しなかったこと、ガソリンの価格統…