脳は美をいかに感じるか

脳は美をいかに感じるか―ピカソやモネが見た世界
セミール ゼキ 著

進化論・認知機能つながりで。
視覚という分野でも、心理学的・生理学的な知見が集まりつつある。著者は、美術とは曖昧さだと考え、美しさを構成する各要素をできるだけ純粋な形で取り出したものが抽象画だとする。そして視覚野の機能と抽象画を結びつけ、議論している。

視覚というのはいくつかのモジュールの集まりでできている。区切り(線)の認識、線の傾きの認識、色の認識、動きの認識等々。特別なものとして顔の認識がある。相貌失認というまれな症状があり、顔を認識するモジュールが何らかの問題で働かなくなるとおこる。顔を構成する一つ一つのパーツはわかっても、まとめあげて誰の顔かはわからないという非常に興味深い状態だ。顔を認識する専門のモジュールがあるということは、それだけ顔の認識は進化論的にも大切ということだろう。このような視覚野それぞれに対応する絵画として、モンドリアンやキネティックアート、肖像画をあげている。

抽象画の持つ美に対する説明としてなかなか説得力があるように思う。また、曖昧さつまり絵画を見て色々な想像が膨らむからこそ美しいのだというのは肩の荷が楽になった気がした。中学生の頃、美術の試験と称して絵画の解釈を選択問題でやらされた嫌な思い出があるから。