2010-01-01から1年間の記事一覧

EBM

医学にEBM(evidence-based medicine)という言葉が登場して約20年になるだろうか。EBMのもっとも原始的な形態は、「この治療法が効く」「いや、あの治療法の方が良い」という論争だろう。まじないと医学の区別がないような時代に、権威主義的な*1伝承から一歩…

職人の経験って

製造業の分野で、職人の経験や暗黙知のようなものがあることは否定しない。ただ、本当にその仕事を大事に思うなら、データ化して後輩が習得しやすくするような努力も必要だろうし、そのことでその仕事が生み出すものをもっと多くの人に届けることができるだ…

ポリオ

以前、蔵さんがポリオワクチンのことでエントリをアップされていた。少し情報を追加しつつ私の考えをまとめてみよう。

消費者は弱者なのか

消費者保護という言葉を聞くことがあるが、保護する必要はあるのだろうか。 消費者は物やサービスが気に入らなければ購入しないだけのことである。消費者はたいていの場合、他に選択肢があるが、企業の側は顧客から見放されると倒産に追い込まれることもまま…

勤勉革命と単純労働

参考文献 マット・リドレー著 「繁栄 (下)」 p28、山田八千子著「自由の契約法理論」p188より リドレーによれば、18世紀の日本は、牛や馬を使って鋤で農地を耕すことをせず、鍬を使って人力で農耕を行っていた。更にリドレーは、日本が自給自足に陥り衰退…

情報格差

情報格差がある場合は対等な交換は成立しないのか。 私自身の立場は情報格差があるからこそ市場が成立するというものだ。「せどり」という業態があるが、これは安く売られている古書を仕入れ、需要のあるところでそれより高く売ることだから、情報格差そのも…

高齢者は弱者なのか

財政赤字が話題になっても、社会保障の削減はあまり話題にならない。特に年金削減というのはタブーのようだ。表向きは高齢者イコール弱者だからとされているが、単純に政権与党の選挙対策としか考えられない。 財政赤字の原因の一つは過去にばらまきをやりす…

結局大企業はどうすればいいのか

参考文献 マット・リドレー著 「繁栄 (上)」 p163よりリドレーの「繁栄」に、ウォルマートが進出してメリットを享受しているにもかかわらず不満たらたらな人々の様子が出てくる。普段は大企業が暴利をむさぼると言って批判する人が、ウォルマートの低価格…

続・チケットショップ

また新宿のチケットショップの辺りを歩く機会があった。年末のためかどこもにぎやかであるが、店によりにぎやかさは違う。やはり客から見て売買が有利な店は行列が長くなり、それがシグナルとなって更に行列が伸びる。客の中にはならびの店の価格を比較して…

交換の強制

自発的な交換には双方のメリットがあるという話を持ち出すと、「選択肢が限られている人がいる」、「強制されたら問題だ」などという意見が出る。 強制されること自体、定義からして自発的な交換ではないのだが。また、選択肢が限られていても選択肢が全くな…

リバタリアニズムの普遍性

slumlordさんの問題提起より。 つぶやき1 蔵さんやfuyushaさんがされているような進化的、遺伝的な見地からの人種、性別、地域間の違いに関する議論は、個人的には興味深いが、積極的に論じているリバタリアンは余りいないイメージがある。リドレーもそうか…

フリーライダーと民族性

フリーライダーについてもう少し考え、遺伝のこととの関連をまとめてみた。wasting time?さんの考察はもっともで、規制による弊害は薄く広くなので目につきにくいのだろう*1。今後、この二つを論じていくには市場に自然発生的に出てくるフリーライダーの弊害…

心を込めるって

知人Xが飲食店を開店することになり、みんなが色々応援していたのだが、別の知人YとZのコメントが面白かった。Y「心を込めた料理を提供すれば大丈夫」 Z「ニーズに応えないと。ビジネス街のランチを狙うのだから素早く提供するのもサービス」 Y「そんな心の…

フリーライダーをどこまで許容できるか

その社会が政府を大きくし、規制を増やしていくかどうかは、フリーライダーをどこまで許容できるかというメンタリティにかかっている、と思う。

私が交換を重視するわけ

mojixさんのエントリーを補足するつもりで。私が「愛情による無償の贈与」よりも「交換」を重視するのには理由がある。別に無神論者だからではない。他人に対して関心がないからでもない。

社会の改善はいつから始まるのか

参考文献 マット・リドレー著 「繁栄 (上)」 p154よりリドレーによれば、人々が川や空気の清浄化を求めるのは所得が4000ドルを超えてからだという。教育や職場の安全対策に力を入れるのも同じようにある所得を超えてからのようである。結論はごく当たり前…

思いやりの考察

参考文献 超ヤバい経済学、人は意外に合理的より初期の行動経済学の結論から更に踏み込んだ面白い話が「超ヤバい経済学」に載っている。ゲーム理論や実験経済学とも関連する話だ。話のポイントは、初期の行動経済学で唱えられていたほど人間には思いやりはな…

香港はどのようにしてできたか

私の中では、香港というのはちょっと神格化された土地かもしれない。小規模でありながら高度に都市化され、規制が少なく、豊かな街。(気候は東京の方が好きだ) 蔵さんが私に発した問いは考えさせられるものだった。 「イギリスの法制度等がなくてもあの街…

信頼の視点からリバタリアニズムを考えてみる

参考文献 マット・リドレー著 「繁栄 (上)」 p128, 142より市場を利用して生活していると、協力と公平性と個人を尊重する社会を築く。閉鎖的な社会の方がむしろ、偏狭なまでに合理的である。つまり、リバタリアンの理想とする社会では人は自発的に偏狭な利…

付加価値の大切さ

参考文献 マット・リドレー著 「繁栄 (上)」 p69より農業従事者が減り始めると、製造業は富を生まないと初期の経済学者たちはうろたえた。製造業に従事するものが減り始めると、経済学者たちはサービス業は製造から注意をそらすくだらないものだとした。今…

資源の呪い

参考文献 マット・リドレー著 「繁栄 (上)」 p53より植民地からの富があるにも関わらず没落したスペイン、現代の産油国がなかなか豊かになれないこと、資源のない貿易立国が豊かなこと等を取り上げて「資源の呪い」を例証している。 現代のアフリカの例に…

予防原則の難しさ

参考文献 マット・リドレー著 「繁栄 (上)」 p50より遺伝子組み換え食品による食料援助を過剰に心配したおかげで、ザンビアの飢饉を悪化させた可能性に付いて言及している。予防原則の運用の難しさがわかる。市場の力は予測力も備えているという例は多数あ…

小さなマーケット

新宿西口から大ガード方面に歩いていくと、何軒かのチケットショップが並んでいる。店同士の競争もあるし、買値と売値が表示されているから小さな株式市場が並んでいるようなものである。各店の価格を比べてみると完全に裁定されているわけではないことがわ…

和服はなぜ高いのか

知人Xから聞いた話。そのまた知人Yが和服を新調してかなり値段がはったということなのだが。 Y氏によると職人の手仕事だから価値があり高いのだという。知人Xはそういうものかと思ったが何か腑に落ちないという。手仕事と言ったって蚕を自分で育て、糸を紡ぐ…

経済発展と収入格差

参考文献 マット・リドレー著 「繁栄 (上)」 p36-37より経済発展に伴い、最初は収入格差が拡大する。しかし、その格差を拡大した力はいずれ格差を解消する方向に向かう。リドレーはハイエクの言葉を引用しながら、その理由として下層階級の地位向上が加速…

薄っぺらい道徳

他人に道徳を説き、「寅さんを見て人情を学びなさい」などと言っていた人が、ふらっと旅行に出かけたバイトを怒っていた。寅さんてそういう人じゃないのかね。

リバタリアニズムを色々な角度から見る

リバタリアニズムと言っても内部では様々な立場がある。無政府資本主義、最小国家、古典的自由主義と分けるのはわかりやすい。LJP内部でも、社会制度としてどの立場が安定的かという議論がある。例えば、蔵さんは哲学的あるいは帰結主義的には無政府が良いだ…

多様性

生物多様性は盛んに取り上げられるのに個人の多様性が軽視されているのはどうしてだろう。

資源に恵まれた国あるいは奪ってきた国が発展するとは限らない

スペインは新大陸から貴金属を奪って来たがその後凋落した。産油国も必ずしも発展しているとは言えない。「征服と文化の世界史」によれば、アフリカでも資源があるからといって順調に発展しているわけではないようだ。 この話から、経済発展には人的資本によ…

ミームからミームへのフィードバック

遺伝子の話でややこしいのは、DNA自体は体と同様、遺伝子の乗り物だという点である。つまり遺伝子とはDNA(ウイルスによってはRNA)に書き込まれている情報それ自体なのだ。では遺伝子はミームと言っていいのか? 私が持っているイメージは、以下のようなも…