神はなぜいるのか?

パスカル・ボイヤー著 「神はなぜいるのか?」より

タイトルからは神という概念に対して肯定的な感じがするが、内容は進化論に基づいた人間の認知機能から「なぜ超自然的な存在がいるように考えるか」を解き明かす本だ。無神論というと、ドーキンスデネットが有名であるが、進化論や認知機能から宗教を捉えたものとしては本書が先駆けだろう。しっかりした内容であるにもかかわらずとても読みやすい。

色々面白いことが書かれているが、気になった部分を。

  • なぜ無生物や偶然の出来事に意図を見いだすか

動物の危険探知機能由来。動物は何か動いたり音が聞こえた場合、注意を払わないと自分が獲物になる可能性がある。逆に注意を払ってそれが無駄でもコストは小さい。よってやや過剰に様々な出来事に危険探知機能が働くようになっている。

  • 先祖の霊といっても抽象化され期待された役割のみになる

先祖の霊の影響などと言われる割に、その先祖の個性は全くと言っていいほど表に出てこない。先祖には人格者もいれば犯罪者もいたはずだが、そのような差は全く考慮されることがない。

あわせて
リチャード・ドーキンス 「神は妄想である」
ダニエル・C・デネット 「解明される宗教」
スーザン・ブラックモア 「ミームマシンとしての私 上下」
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