思ッタコト

スラムの物価は高いか

スディール・ヴェンカテッシュの「ヤバい社会学」や「アメリカの地下経済」を読むと、スラム街の物の値段が概して高い記載がある。強盗などのリスクプレミアムと説明されていたと思う。しかし、日本のスラム街はたいていの物は安いように思う。質だけでは説…

価格をつり上げることのできる企業などない

大企業というとそれだけで「強欲」で「価格をつり上げている」というイメージが持たれているようだ。自由な市場では大企業が価格をつり上げることなどできない。それより低い価格で商品なりサービスなりを提供する企業が現れて、大企業の地位を脅かすように…

エコポイントの影で

タイトルではエコポイントとしたが、エコカー減税なども含めて。 エコポイント・エコカー減税の目的は何だろう。環境問題対策*1より景気対策という意識の人が多いはずだ。一応景気対策として考えてみる。 エコポイントが付くからといってもう少し先まで使う…

モジュールは同じでも

人間の意識や思考、どのように外界を認識しているかに付いては色々わかって来ているようだ。 ピンカーやデネットの一連の著作やパスカル ボイヤーの「神はなぜいるのか」では、人間の思考を支えるモジュールとして「直感物理学」や「志向性」に触れている。…

演繹と帰納、ベイズ

蔵さんがアップされたEBMの話を読んで色々考えた。ある程度自然科学になじんだ人間は蔵さんが書かれる通り、ホメオパシーを試しもしないで退けるだろう。科学者としてはフェアな態度ではないかもしれないが、物理や化学の知識から実験するまでもなく間違いだ…

石油はなくなるのか

現在利用可能な原油埋蔵量は価格や採掘コストに左右される。原油価格が上昇すればコストに見合わないとして放置されていた油田からの採掘が始まる。また、長期的には別の資源が利用可能になる*1。 *1:石炭はなくなると言われていたが、原油の方が利用価値が…

企業の撤退は悪か

企業が工場を閉鎖するというと犯罪であるかのように言われる。しかし、赤字操業が続けばその企業全体が倒産に追い込まれるだろうし、経営陣は株主から訴訟を起こされるかもしれない。そもそも株の価値がなくなったらその損害は誰に文句を言えばいいのだろう…

福祉制度が機能しないわけ

公的な福祉と民間の競争する福祉団体の違いは何だろう。公的な福祉は独占団体ということだ。競争がないから効率が悪い。逆に福祉を民間主体で行うようになれば、団体同士が競争し、互いの目の届かないところをカバーし合う可能性が生まれる。そもそも、国が…

株仲間の話

wasting time?さんの株仲間の話を読んでもっともだと思った次第。付け加えるとすれば、問題となる独占は政府の規制によるものだというロスバードの議論をあげておきたい。追伸 トラックバックをしてみたがうまくいったかな?

EBM

医学にEBM(evidence-based medicine)という言葉が登場して約20年になるだろうか。EBMのもっとも原始的な形態は、「この治療法が効く」「いや、あの治療法の方が良い」という論争だろう。まじないと医学の区別がないような時代に、権威主義的な*1伝承から一歩…

消費者は弱者なのか

消費者保護という言葉を聞くことがあるが、保護する必要はあるのだろうか。 消費者は物やサービスが気に入らなければ購入しないだけのことである。消費者はたいていの場合、他に選択肢があるが、企業の側は顧客から見放されると倒産に追い込まれることもまま…

情報格差

情報格差がある場合は対等な交換は成立しないのか。 私自身の立場は情報格差があるからこそ市場が成立するというものだ。「せどり」という業態があるが、これは安く売られている古書を仕入れ、需要のあるところでそれより高く売ることだから、情報格差そのも…

高齢者は弱者なのか

財政赤字が話題になっても、社会保障の削減はあまり話題にならない。特に年金削減というのはタブーのようだ。表向きは高齢者イコール弱者だからとされているが、単純に政権与党の選挙対策としか考えられない。 財政赤字の原因の一つは過去にばらまきをやりす…

心を込めるって

知人Xが飲食店を開店することになり、みんなが色々応援していたのだが、別の知人YとZのコメントが面白かった。Y「心を込めた料理を提供すれば大丈夫」 Z「ニーズに応えないと。ビジネス街のランチを狙うのだから素早く提供するのもサービス」 Y「そんな心の…

社会の改善はいつから始まるのか

参考文献 マット・リドレー著 「繁栄 (上)」 p154よりリドレーによれば、人々が川や空気の清浄化を求めるのは所得が4000ドルを超えてからだという。教育や職場の安全対策に力を入れるのも同じようにある所得を超えてからのようである。結論はごく当たり前…

香港はどのようにしてできたか

私の中では、香港というのはちょっと神格化された土地かもしれない。小規模でありながら高度に都市化され、規制が少なく、豊かな街。(気候は東京の方が好きだ) 蔵さんが私に発した問いは考えさせられるものだった。 「イギリスの法制度等がなくてもあの街…

小さなマーケット

新宿西口から大ガード方面に歩いていくと、何軒かのチケットショップが並んでいる。店同士の競争もあるし、買値と売値が表示されているから小さな株式市場が並んでいるようなものである。各店の価格を比べてみると完全に裁定されているわけではないことがわ…

和服はなぜ高いのか

知人Xから聞いた話。そのまた知人Yが和服を新調してかなり値段がはったということなのだが。 Y氏によると職人の手仕事だから価値があり高いのだという。知人Xはそういうものかと思ったが何か腑に落ちないという。手仕事と言ったって蚕を自分で育て、糸を紡ぐ…

薄っぺらい道徳

他人に道徳を説き、「寅さんを見て人情を学びなさい」などと言っていた人が、ふらっと旅行に出かけたバイトを怒っていた。寅さんてそういう人じゃないのかね。

リバタリアニズムを色々な角度から見る

リバタリアニズムと言っても内部では様々な立場がある。無政府資本主義、最小国家、古典的自由主義と分けるのはわかりやすい。LJP内部でも、社会制度としてどの立場が安定的かという議論がある。例えば、蔵さんは哲学的あるいは帰結主義的には無政府が良いだ…

多様性

生物多様性は盛んに取り上げられるのに個人の多様性が軽視されているのはどうしてだろう。

ミームからミームへのフィードバック

遺伝子の話でややこしいのは、DNA自体は体と同様、遺伝子の乗り物だという点である。つまり遺伝子とはDNA(ウイルスによってはRNA)に書き込まれている情報それ自体なのだ。では遺伝子はミームと言っていいのか? 私が持っているイメージは、以下のようなも…

都市化と遺伝子変異

いくら都市化が遺伝子の変異を加速するといっても、遺伝子変異が広まって固定化するには数世代では無理だ。しかし、遺伝子が生み出した科学技術は、直接遺伝子を操作するという段階に入りつつある。例えば遺伝子治療という言葉はもう定着しているはずだ。こ…

都市が進化を加速する

参考文献 一万年の進化爆発 グレゴリー・コクラン、ヘンリー・ハーペンディング著蔵さんに紹介して頂いた本である。なお、進化論の書評で有名なshorebirdさんも書評されている。本書の趣旨は、人類は進化を止めておらず、遺伝子が作り出した環境により遺伝子…

過密と一人になること

都市の利点は人の密度が濃いことだと繰り返して来た。しかし、顔を突き合わせてばかりではストレスもたまるだろう。こういうときは都市の希薄な人間関係の出番だ。仕事、趣味などシーンが切り替われば人間関係も変わるし、一人でいることもできる。考え事を…

都市の本質は情報・ミームなのか

設備だけあってもうまく行かないのだから、都市を大きな建物が集まっているものなどと捉えるべきではない。人々が集まっていることにより人的資本(知識、文化、ミーム)が効率的に利用されていることに都市の本質があると考えるべきである。つまり情報がス…

The Rational Optimist邦訳出版予定

参考文献 ダン・ガードナー著 「リスクにあなたは騙される」 、サンドラ・ヘンペル著 「医学探偵ジョン・スノウ」蔵さんのエントリで名前を挙げていただいた。蔵さんには、いつも知的な刺激を与えて頂いて感謝している。リバタリアニズムという共通点以外に…

都市とリバタリアニズム

参考文献 山岸俊男著 『「安心社会」から「信頼社会」へ』 より『「安心社会」から「信頼社会」へ』で山岸は、知らない人を信頼する度合いがアメリカより日本の方が低い、ということを社会心理学的実験で実証している*1。また、本書において他者への信頼が高…

時間の価値

以下の話はデータに基づいているわけではなく、本当に思ッタコト。価値のあるものって何だろうと考える。お金だろうか。健康だろうか。時間は寿命という意味で限りがあり、過ぎた時間は取り戻せない。経済学的にも希少性のあるものと言っていいはずだ。機会…

農業の生産性と食料危機

参考文献 ビョルン・ロンボルグ著 「環境危機をあおってはいけない」、アマルティア・セン著 「人間の安全保障」・「貧困の克服」より人類が農業を始めて以来、着実に生産量、生産性は高まっている。この先どこまで生産性が高まるかはわからないが、少なくと…