自由の構造(2回目)

書評の続き

自由の構造

ランディ・E・バーネット著「自由の構造」を読了。今回から少し内容の把握できる書評にしたい。

自由のためのメカニズム

デイヴィド・フリードマン著 リバタリアニズムの中でも、帰結主義的なアナルコキャピタリズムを唱えるデイヴィド・フリードマン。経済学的に政府がない方がみんなハッピーなるという考え方である。 気になった部分をまとめる。 人間がものを手に入れる方法は…

医療崩壊

医療崩壊という言葉がある。産科、小児科、夜間救急などの現場で仕事があまりにもハードな上に訴訟も多く、その割に仕事に見合った収入が得られないといった理由から医師を中心とした医療スタッフがその現場を離れてしまうことを言うようだ。 思ったことはい…

無政府社会と法の進化

無政府社会と法の進化・蔵研也著読了。著者は学術的で(一般向けにはということだろうが)つまらないと言っているが、三冊の中で一番面白かった。無政府社会での警備会社の役割、法(取り決めのようなイメージか)も変化する様が生き生きと書かれている。 一…

国家はいらない

国家はいらない・蔵研也著読了。上記の前著とは違い、税金がいかに無駄に使われているかに切り込んだもの。著者も最後のあたりで触れているが、リバタリアンのみならず対極的な平等主義者にとっても読む価値のある本になっている。税金によって新しい差別が…

リバタリアン宣言

リバタリアン宣言・蔵研也著読了。リバタリアニズムに関する本も少しずつ増えてきているが、まだまだ日本人研究者によるものは少ない。この本はリバタリアニズムの基本的な部分を押さえた良書。他の二冊もそうだがとにかく読みやすいのがよい。情報へのアク…

考える技術としての統計学

飯田泰之さんの考えるシリーズ*1の三冊目。いつものクリアな記述が冴え、統計をツールとしてどのように利用するかということが丁寧に解説されている。良書。小島寛之さんの統計の解説と双璧。 ただし、47ページの「福利」は「複利」の誤植だろう。よい本なの…

誘惑される意志

ジョージ・エインズリー著 山形浩生訳経済学の大切な前提に「人間は合理的な判断を下す」という考え方がある。しかし、宝くじのように期待値から判断すれば購入するはずのないものについつい手が出てしまう人がいるのも事実である。また、長期的な視点からす…

人間の本性を考える

「人間の本性を考える」を読了。人間は空白の石盤である、つまり生まれてからの環境によりどのような人間にでもなるという仮説を徹底的に論破している。生まれつき頭の回転が速い人間もいれば、生まれつき悪事に手を染めやすい人間もいるということだ。遺伝…

インセンィヴの力

経済学の核心を「人はインセンティヴに反応する」と言い切ったのは名著「ランチタイムの経済学」である。このほかにもインセンティヴで物事を切った本に「まっとうな経済学」や「日常生活を経済学する」がある。シカゴ学派というかリバタリアニズムの影響が…

そもそも株式会社とは

岩田規久男 著 株式会社の株主、経営者、従業員の関係について論じている。岩田先生の本で最近書かれたものはどれも読みやすく、説得力がある。 すでにbewaadさんからいくつか疑問点が提示されている。私も一つ気になる点があるので、bewaadさんにトラックバ…

   経済論戦の読み方

田中秀臣 著 インフレ目標政策に興味があり、代表的な論者である田中秀臣氏の同書を読んだ。おすすめ。「日本経済を学ぶ」の方が取っ付きやすいが、図表で考えることができるという意味ではこちらがより教科書らしい。「日本経済を学ぶ」とあわせて読んで理…

   日本経済を学ぶ

岩田規久男 著 かねてから名著という話の「日本経済を学ぶ」を読んだ。とても読みやすい上に自分の考え違いを訂正されることばかり。おすすめ。 気になったところ 日本の経済成長の原動力は、産業政策によるもではなかった。むしろそれは有害で、市場の力を…

  銃・病原菌・鉄

ジャレド ダイヤモンド著 上下二巻の大作。主に環境要因と文明の進歩の関係を論じたもの。展開がやや強引な気もするが、確かに、集団生活を始めなければ文明も発展しない、集団生活には定住が必要、定住するためには食料をどうするのかと考えると、この本は…

        フェルマーの最終定理

サブタイトル ピュタゴラスに始まり、ワイルズが証明するまで サイモン・シン著 暗号解読と同じ著者の秀作。現代の暗号である「素因数分解が困難なことを利用した公開鍵方式」とは、数論でつながっている。フェルマーの最終定理の周辺の話題もうまくまとめら…

   下がり続ける時代の不動産の鉄則

寺田昌則著 景気が上向いてきているようだが、不動産市況は改善するのだろうか。ほとんどの人の答えは「景気が良くなれば地価も上がる」であろう。本書の答えは「ほとんどの場所ではNo」というものだ。人口が減っているのに、マンションや新築住居、オフィス…

   経済学という教養

稲葉振一郎著 「ライブ・経済学の歴史」とは違い、経済学全体を俯瞰するような構成ではない。マクロ経済学の大きな流れを解説、日本の経済システムに付いて思うところを述べ、マルクス(左翼について語る章もある)について思うところを述べ、厚生経済学に付…

   ライブ・経済学の歴史

小田中直樹著 市場対国家を読んで、今までのところ国有企業や規制に守られた企業がうまく行っていないこと、従って規制緩和と小さな政府が理念としては世界的な潮流になっていることを大雑把につかんだ。次の問題は、全くの手放しでは行けないから、どのよう…

   クルーグマン教授の経済入門

ポール・クルーグマン著 私は、経済学の専門家ではないので、専門家がどのような考えで現実を見ているか知りたかった。読みやすくて内容もよいという評判のこの本に取り組んだ。 いかにもアメリカの優秀な学者らしいと思ったのが、「たくさんの人の生活水準…

  市場対国家 上下

ダニエル・ヤーギン ジョゼフ・スタニスロー著 国家*1が様々な形で市場に介入すること、あるいは、市場のない共産国家では国家そのものが計画・生産・分配を行うことについての問題点を丹念にまとめあげている。丁度今の郵政民営化にタイムリーな内容である…

   土井ラブ平の魅力

検索しても、土井ラブ平について取り上げているサイトがほとんどないので取り上げてみる。一番の魅力は、独特の観察眼とそれを活かすイラストだろう。Tokyo1週間の連載「土井ラブ平の街ののぞき絵師」を見るとああ、こんな奴いるいると思わせるものばかり。…

   土井ラブ平

Tokyo1週間という雑誌をご存知だろうか。その中で見開きのカラーページに連載を持つイラストレーターである。最初、名前とイラストからは男性かと思っていたが、行動パターンを見つつ、ネットでの情報と照らし合わせると女性のようである。 「土井ラブ平の街…

  暗号解読

サイモン シン著 暗号について書かれた本。このように書くと味も素っ気もないが、暗号を作る側と破る側の攻防が背景まで丁寧に書き込まれた良書である。暗号に関係する数学についてもわかりやすく解説されている。良質のドキュメントは単なる小説より遥かに…