誘惑される意志

ジョージ・エインズリー著
山形浩生

経済学の大切な前提に「人間は合理的な判断を下す」という考え方がある。しかし、宝くじのように期待値から判断すれば購入するはずのないものについつい手が出てしまう人がいるのも事実である。また、長期的な視点からすると、ダイエットした方がいいはずなのに、思わずケーキを食べてしまったということもあるだろう。経済学では、将来のものの価値を指数割引で評価してきた。仮に一年での金利が10%だとすると一年後の100万円は今の約90万円と同じだ、という考えかたである。それに対してエインズリーは、動物(人間を含む)の評価は双曲線型だと唱える。そのため、指数型では起こりえない、近い将来の方が高く評価されうる場合があるというのだ。この考えをコアにして今までの学説では説明できなかった人間の行動、特に「意志」を説明していく。
経済学では、行動経済学がこの話と関係するのだろう。飯田泰之さんのこちらの解説はとてもわかりやすい。