下がり続ける時代の不動産の鉄則

寺田昌則著
景気が上向いてきているようだが、不動産市況は改善するのだろうか。ほとんどの人の答えは「景気が良くなれば地価も上がる」であろう。本書の答えは「ほとんどの場所ではNo」というものだ。人口が減っているのに、マンションや新築住居、オフィスビルの大量供給は続くから、というのがその理由。条件の悪いところは売却すらできなくなるだろうと予想する。今後のことは時間が経過しないと評価できないけれども、説得力のある議論である。とすれば、条件の悪いところは早めに売却、不動産を購入する場合待てるならまだ待った方がよい、購入するなら土地の利用価値をよく考えて、ということになるだろう。ここ数年で地価が上がっていくと予想されるのは超一等地と言われる、銀座の中でも特定の地点、誰でも知っている超高級住宅地の一部などになるだろう。
利用価値を測定する物差しの一つに、本書でも少し触れられている「収益還元法」がある。投資金額と家賃から利回りをはじき出す方法だ。現在は超低金利だから、預金より見かけの運用利回りが魅力的に映る。これが盛んに宣伝されている不動産投資の殺し文句でもある。しかし、金利が上がったり、より家賃の安いところを求めて入居者が引っ越したとたんに、収入計画は狂ってしまう。また、物件そのものも価値が大きく下がる可能性もある。バブルの頃こそ収益還元法で冷静になることが必要だったのだ。
個人的には、売却できない不動産は資産だとは言えない時代になったと思う。