自由の構造(3回目)

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第7章から第二部に入る。第二部のテーマは利益である。第7章では、(利益の)部分性問題が取り上げられる。人間は誰でも自分の利益を優先するが、自分と関係の薄い人間の利益も考慮に入れつつ行動しなければならないというものである。このためには、分散化された管轄権*1の存在と正義の内容を伝達する法の支配が重要である。分散化された管轄権は自分の利益を局所化するすることができる。つまり自分の財産を使用して利益が発生しても他人に収奪されることはなくなる。また事前に正義の内容が伝達されることにより、他人に損害を与える可能性について考慮することができるようになる。
第8章では、インセンティヴ問題を扱う。第一階の知識問題*2とブキャナンの言う「選択のコスト*3」の問題があるため、管轄権を侵害するとインセンティヴが低下するという問題である。双方が同意した契約による財産の移転を法が保証することで*4インセンティヴの低下に対処する。
第9章では、遵守問題を扱う。正義や法が要求する行為と人々が利益になると考える行為の衝突のことである。バーネットは損害賠償を正当化し、犯罪予防についても考察する。第8章は刑罰論としても面白い。
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*1:これは個人の所有権と同義である

*2:人間の持つ知識は局所的である

*3:何かを選択すると放棄した選択について主観的なコストを負う

*4:損害賠償なども規定される