合意による道徳

契約論的リバタリアニズムに属するとされる「合意による道徳」を読了。
充分に消化できたとは言えないが、自分の頭を整理するために書評を書いてみる。
まず著者の基本的なスタンスは合理的選択理論である。また、市場がうまく機能しているときには問題はあまりないと考えているようだ。この二つを前提としている。次に本書のテーマである、利己的な個人の間にいかにして協力が生まれるかについての精緻な議論が始まる。著者は市場の失敗に対して政府を持ち出さない。市場の失敗に対して、合理的な考察の結果協力が生まれていくメカニズムを解明していこうというものだ。協力の原動力として同胞愛などの感情を持ち出すことはしない。あくまで合理的選択の結果として協力が生まれるとするのが特徴である。また、ロック的但し書きによる考察は、所有権基底的なリバタリアニズムの議論が頭に入っていれば理解しやすいように思う。

リバタリアニズムに限らず、社会契約論はフィクションだという批判を受ける。本書もその批判を免れることはできない。ただ、リバタリアンに対する誤解、自分勝手で協力することはないというイメージを理論的に打ち砕くのには有効だと考える。

有名な本だが、意外に取り上げられていないようなのでアップしておきます。