自由市場の道徳性

アレキサンダー・H・シャンド著
オーストリア学派の入門書という位置づけであるが、オーストリア学派を様々な経済思想と比較することでその立場をはっきりさせている。その性質上、ノージックや集産主義も登場し、その射程はかなり広い*1
第一部は、2章からなる。
第一章はオーストリア学派の特徴を簡潔にまとめている。オーストリア学派は基本的公理として「人間はある一定の諸目的を達成するために意図的に行為する」を掲げている。公理主義を特徴づけるため、シャンドはオーストリア学派実証主義を特徴とするシカゴ学派と比較する。また、オーストリア学派の特徴である個人主義・主観主義も浮き彫りにされる。ハイエクの「科学の方法をそのまま経済学に適用してはならない」という言説も紹介される。経済学からみた場合の自由主義というとシカゴ学派オーストリア学派ということになるのであろうが、それぞれの特徴が簡潔にまとめられている。第二章でも触れられるが、社会全体をマクロとして捉えるという部分はシカゴ学派オーストリア学派の最も大きな違いの一つではないかというのが私の実感。
第二章では、ハイエクの自生的秩序や知識の限界についてまとめられている。また、個人主義から出発して歴史主義を批判するに至った流れがまとめられている。

*1:ただし触れただけというところが多数あるのは仕方ないことだろう