禁煙はなぜ難しいか。禁煙の経済学

禁煙はなぜ難しいか。経済学の仮定では、人間は合理的な判断をするはずである。喫煙者のほとんどはタバコが慢性閉塞性肺疾患や肺がんの原因になっていることを知っているであろう。それを肯定してはいなくても嫌になるほど聞かされたことであろう。ならば、お金をかけてわざわざ病気になることはないはず。それでもタバコがやめられないのだ。
生理学的な理由としてニコチンの中毒性があげられている。中毒性が高いからわかっていてもやめられないのだと。これを行動経済学では、双曲型割引という考え方で説明する。おおざっぱに書くと、遠い将来のことより目の前のことが優先する傾向があるという考え方。タバコの場合、ニコチンの中毒性が特に現在を優先するバイアスを高めているように思われる。
ほかにも全く違う方向からのアプローチがいくつかある。公害での考え方と同じく、タバコで周りの空気を汚しても費用負担はないからだ、つまり外部性があるからだという考え方。また、保険に関しては、非対称情報の経済学からのアプローチもある。保険に加入する人間が喫煙するかどうかについて保険会社は情報がないのが普通である。自己申告も完全には信用できないだろう。すると、その項目は保険料に反映されないことになる。タバコを吸っていてもいなくても保険料が変わらない場合、禁煙するインセンティヴがなくなる(自動車保険に入ると余計に無謀運転するという理屈と同じ)はずだ。この後、悪質な加入者が増えて...という話が続くが禁煙が難しいことについてはここまでで十分だろう。
双曲型割引や情報の非対称性は解消が難しいかもしれないが、外部性については内部化することが可能かもしれない。誰かいいアイディアがあったら発表しないかなぁ。