robustな理論

蔵さんが紹介していた「性欲の科学」を読み終えた*1。内容に関する感想は蔵さんとあまり違わないのだが、なかなか本音を聞きづらい分野をネットを使ってうまくまとめたなというのが印象的であった。男女の違いを色々な角度から捉えていて面白い。
もう一つ、科学とタブーの問題について考えさせられた。「性欲の科学」の前半で、いかに「性」に関する研究がタブーでありなかなか手がけにくいものであったか書かれている。ここは著者に全く賛成で、本来自然科学にタブーなど不要である。その意味ではリバタリアン的な気質にもあうかもというのが蔵さんに勧めた理由であった。
このように従来タブーとなっていたことにも少しずつ科学のメスが入り、解明されてきているが、もう一つ最も遅れている分野が宗教だろう。無神論については何度か書いたことがあるが、最近は宗教についても科学的に取り組んだ著作が増えているのは喜ばしい。信仰の自由と科学による解明は全く無関係である。どんどんメスを入れるべきだろう。
さて、宗教が私にとってあまり説得的ではないように感じられるのは、前提や論理の展開がrobustではないからだ。数学の公理は非常に厳密に構築されるし、物理の検証も10億分の1秒という単位で行われるようになっている。こうなってくると人間の感覚で「正しい」などというレベルではない。また、社会現象や生物学的な現象も統計を取ってみると直感と違っていることがよく目につく。多分、理論構築、データの裏付けといった部分で私にとって説得的かどうかが決まっているように思う。

*1:そもそもアマゾンのリコメンドから蔵さんに勧めたのは私だった